生産活動に欠かせないQCD、QCDS、PQCDSMEとは
生産管理の3要素「QCD ~品質・コスト・納期~」とは?
生産活動とQ(品質)、C(コスト)、D(納期)
QCD(きゅーしーでぃー)とは
QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を取ったもののことを指します。
工場運営において、顧客の期待に応えるためには、必要不可欠な要素です。製造業をはじめとしたあらゆる企業において、営業、企画、設計開発、生産現場、アフターフォロー等で重視すべき3つの要素が、このQCDとなります。
一般に、「品質」というと、Quality(品質)のみが思い浮かびますが、これは狭義の品質とも呼ばれます。顧客に求められる総合的な品質(広義の品質と表現することもあります)という視点では、Quality(品質)だけではなく、Cost(コスト)とDelivery(納期)も含まれると覚えておきましょう。
顧客のニーズ~より良いモノを、より安く、タイミング良く欲しい!~
工場は、材料を購入し、製品を製造します。この時、支払いを行ない、お金が出ていきます。
そして、製造が完了した製品は、出荷・販売され、顧客に届きます。この時、対価として、お金が入金されます。
当然ながら、顧客からの入金がなければ工場は存続することは出来ません。これが工場のお金の流れの基本であり、お客様あっての生産活動なのです。
従って、生産活動においては、この流れをいかに早く、正しく回していくかが非常に大切になります。つまり、お客様は「より良いモノを、より安く、タイミング良く欲しい!」というニーズを必ず持っているのです。
お客様のニーズに応える、そのためには4Mを適切に組み合わせることで、生産管理の3要素QCDを満足させなければいけません。
※4Mとは・・・人(Man)、モノ(Material)、設備(Machine)、作業方法(Method)のこと
適切な知識やスキルを持った人(Man)が、最適な道具や材料等のモノ(Material)、最適な設備(Machine)を使い、最適な作業方法(Method)で仕事を進めることが出来れば、QCDを満足させることが出来るはずですよね。
以上で説明した、「4Mを適切に組み合わせてQCDを満足させる」という視点は、生産活動に携わる人であれば常に頭の中に入れて仕事を行なうことが非常に大切なのです。
生産管理の3要素の優先順位
第1優先は、Quality(品質)!
生産管理の3要素QCDは、どれも重要です。しかし、品質が安定していなければ、コストも納期も達成できないという意味を込めてQ(品質)が先頭に来ています。
品質は、何よりも最優先です。品質が落ちると、クレームにより信頼が低下し、注文がもらえないことにもなり得ます。また、手直し、やり直しにより、納期遅延やコストアップへも繋がってしまうことになります。
第2優先は、Delivery(納期)
品質の次に大事な要素は何でしょうか?これは会社によっても考え方に違いがあるかもしれませんが、一般には、納期が次に重要だと言われています。
現代では、納期は注文決定の重要要因の1つです。納期が長いと、注文をもらえません。また、納期に遅れても信頼が低下し、注文がもらえなくなってしまいます。
第3優先は、Cost(コスト)
そして、最後はコストです。3番目とは言え、超大事な3つの要素の3番目であるため、こちらも重要な視点です。
優先度は3番目とは言え、コストは利益に直結します。競争力へも直結します。コストが高いと、当然利益は出ません。そして、価格が高いと、お客様から注文をもらえません。
以上をまとめると、企業においては「Q:品質」は絶対的な要素です。更に、「D:納期」で他社との優位性を持ち、「C:コスト」を下げて競争力を獲得していくようにするという視点が大事であることを理解しておきましょう。
生産管理の3要素QCDの管理のポイント
要求に応えるためにはどうすればよいかを見極める
まず、品質とコストに関するポイントです。
顧客の品質要求を明確にし、顧客の価格要求に応えるためには、どういう造り方をすべきか見極めることが求められます。
なお、必要以上の品質(過剰品質)はコストを上昇させ、結果的に顧客要求に応えられないことになるので注意しなければいけません。
そして、納期に関しては、顧客要求を守るためにはどう生産をコントロールすればよいか見極めることが求められます。
なお、出来ない納期を約束して顧客の信頼を失わないように注意しなければいけません。
安全を加えた「QCDS」と生産性・モラル・環境を加えた「PQCDSME」とは
安全(Safty)の視点
生産管理の3要素QCDの大前提として、「安全(Safty)」があることも忘れてはいけません。製造業に限らず、あらゆる業種で最優先とすべきなのが安全です。労災等の安全上の問題の発生は、企業にとって大きなダメージになります。生産活動の中で一番優先すべき要素であり、生産活動の入り口でもあります。
QCDをいくら高レベルで達成したとしても、災害が起こる現場で作られたものは、誰も買いたくありません。また、働く人が「危険」を感じながら作業を行なっていたのでは、「良い品質」なんて出来る訳がありません。
つまり、働く人の安全が大前提です。更に、製品のライフサイクルに渡り、使用者を含む全ての関係者の安全を保証することも大切な視点です。これは「製品安全」と呼ばれます。
このような考え方を1人1人が意識して生産活動を行うことを目的として、安全(Safty)の頭文字の「S」をQCDに付けることで、QCDSと表現することもあります。QCDSと表現されていれば、QCDだけではなく、安全Sの視点も加えられていると覚えておきましょう。
そして、QCDSよりも更に広義に「生産活動に必要な要素」という視点で捉えると、「生産性生産性(Productivity)・モラル(Morale/Moral)・環境(Environment)」も追加することがあります。
生産性(Productivity)の視点
生産性はご存知の通り、働く現場における効率のことです。「時間当たり、どのくらいの数・量の製品を作れたか/サービスを提供できたか」を指します。
当然ながら、QCDを満足させるためにも、生産性は継続的に向上させる活動を進めていかなければなりません。
利益を創出することは会社の存続条件です。他社に比べて価格競争力で劣れば、お客様は一気に離れてしまいます。どれだけ小さな労力でどれだけ大きな付加価値を生み出せるかが大切となります。
モラル(Morale/Moral)の視点
Motivation(動機付け)と表現している会社もあります。働きがいが影響する要素で、従業員満足度や従業員エンゲージメントなどで測られます。
生産性や安全はイメージし易いと思いますが、それだけではなく、働く人の心の健康にも目を向けていかなければいけない時代です。人間の尊厳を大事にして生産活動を行なっていくことは、社会的な義務でもあるのです。安全な職場環境と心の健康に目を向けて行なう活動を「労働安全衛生活動」と言います。
環境(Environment)の視点
ご存知の通り、現代の生産活動においては、地球環境にも目を向けていかなければなりません。
環境保全を前提とした循環型社会の形成が求められています。自動車リサイクル法、容器包装リサイクル法等、様々な法律を踏まえた事業活動が必須となっているのです。
QCD、QCDS、PQCDSMEのまとめ
以上で学んだことをまとめてみましょう。
QCDとは
- Q(品質)、C(コスト)、D(納期)のこと
- 広い視点で品質を捉えると、「Quality:品質」だけでなく、「Cost:コスト」「Delivery:納期」も重要
- お客様のニーズに応えるために、4M(人・モノ・設備・作業方法)を適切に組み合わせてQCDを満足させるという視点が大切
QCDSとは
- QCDに安全(Safty)の「S」を追加したもの
- 生産管理の3要素QCDの大前提として大切な視点を追加している
PQCDSMEとは
- QCDSに、生産性(Productivity)、モラル(Morale/Moral)、環境(Environment)を追加したもの
- 生産活動においては、これらの視点も踏まえて生産活動を行なっていくことが必要不可欠
一言で品質といっても、「狭義の品質」や「総合的な品質(広義の品質)」といったように、色々な視点がありますね。また、PSMEは、品質に直結する要素ではないものの、「品質に関わる要素として大事」であると、しっかりと覚えておきましょう。
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