カイゼンベース / KAIZEN BASE

ニンベンの付いた自働化とは?自働化の狙いや事例を解説

自働車工場の風景の画像
藤澤 俊明

藤澤 俊明

代表取締役
シニアコンサルタント

トヨタ自動車の生産技術部門を経験後、製造系大手コンサルティングファームを経て2015年にカイゼンベース株式会社を設立。国内外の製造業を中心とした人材育成・改善支援に尽力中。

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ニンベンの付いた自働化とは

2つの「ジドウカ」

「ジドウカ」という言葉は、「自動化」と「自働化」という2種類があります。どちらも日本語としてはおかしくありませんが、トヨタ生産方式では、後者の「自働化」を使います。この2つを区別するために、「ニンベンの付いた自働化」という呼び方が一般的です。

「自動化」と「自働化」

1つ目の「自動化」・・・人の”作業”を機械に置き換える事を指す。
2つ目の「自働化」・・・人の”働き”を機械に置き換える事を指す。ニンベンの付いた自働化と呼ぶ。

2つの「ジドウカ」、違いは?

どんな人の働きを機械に置き換えるのか

では、ニンベンの付いた自働化の目的について確認していきましょう。

ニンベンの付いた自働化では、どんな人の働きを機械に置き換えるのでしょうか。3つあります。それは、
・機械の異常を判断して、設備を止めること
・品質の異常を即座に見つけて、設備を止めること
・ライン・工程の異常を判断して、止めること

このように、異常が出たら止まる機構を機械が持つことで、作業者や、管理監督者の時間を、付加価値の高い、他の仕事へ振り向けることが出来るようになります。

機械を止めること自体が目的ではなく、あくまで人に付加価値の高い仕事をさせ、原価低減に繋げることが狙いなのです。

どんな人の働きを機械に置き換える

自働化の2つの狙い

そして、自働化において人の働きを機械に置き換えることにより、具体的には次の2つのことを狙っていきます。

1つ目は、省人化です。省人化においては、自働化により、人を機械の番人にしないことがポイントです。

2つ目は、品質・設備・ラインのつくり込みです。つくり込みにより、問題点を見える化し、自工程完結を進め、人材育成へ繋げていくことがポイントです。

自働化とは 2つの狙い

自働化による省人化

では次に、「自働化による省人化」について、詳しく確認していきましょう。

機械が異常で止まらないと・・・

機械が異常で止まらない場合、作業者がその場にいないと、どのようなことが起こるでしょうか。

そう、このような機械では、不良が発生し始めたら、ずっと不良を造り続けてしまい、大きな損失が発生するのです。

そのような状態になると、「不良による損失を出さないように、常時監視しておかなければ」、という発想に至ります。

こうして、人が機械の番人になるのです。

自働化による省人化 異常で止まらないと・・・

以上の様に、例えば、人の手で行なっている作業を、自動で動く機械に置き換えた場合、この機械が、「異常が出たら止める機構」を持っていないと、作業者は、異常が発生していないかを、「常時監視」しなければいけません。

これでは、せっかく機械を入れても、コストが下がりません。ただ、「作業が楽になった」 というレベルにしかならないのです。このような、ニンベンの付かない自動化ではいけません。

人の手で行っている作業を、自動で動く機械に置き換えた!

目指すべきは、ニンベンの付いた自働化

例え、いくら機械を沢山導入したとしても、1人1台で監視をしなければいけないのであれば、結局省人化できず、原価低減に繋がりません。

目指すべきは、このように、異常時に機械が自動的に停止する機構を組み込み、多台持ちが出来る、ニンベンの付いた自働化です。

異常時に、しっかりと停止してくれるからこそ、安心して1人で何台も面倒をみることができたり、他の付加価値の高い仕事を行なうことができるのです。

自働化によって省人化でき、原価低減に繋がる!

ニンベンの付いた自働化によるつくり込み

では続いて、「自働化によるつくり込み」について、確認していきましょう。

問題の真因が掴めないまま生産を続けても必ず再発する

一般的に、ライン停止や機械停止は、生産ロスの増加に繋がります。

そして、もし停止が発生した時には、「何で止まったんだ、何で止めたんだ」、という強い指摘を受けることも多々あります。

すると、「何かあっても機械は止まらないようにしておこう。」「止まってもすぐに起動させよう。」という発想になりがちです。

しかし、問題の真因が掴めないまま生産を続けても、また同じロスが発生し、ムダが再発してしまいます。
後工程(顧客)に迷惑をかけることにもなります。最悪の場合、会社の信用を失うことにもなりかねません。

ライン停止・機械停止は、生産ロスの増加に繋がります

機械を止めることは非常に重要

そうならないように、機械を止めることは非常に重要です。
しっかりと止めて、再発防止策を実行することで、次のことが期待できます。

・異常時の不良発生数が減少する。
・同じ問題が繰り返されなくなる。
・問題点が見える化され、埋没しない。
・自工程完結という考え方により、「品質は工程内でつくり込む」という意識が向上する。
・不良の再発防止策を考えることができ、その習慣により人材が成長する。

機械を止めて、つくり込む!

良い品質、良いライン、良い機械をつくる

異常を検知し、標準外の状態を知り、機械やラインが止まる、あるいは止める。そして、管理監督者が真因を見つけ、取り除き、それを標準に組み込む。

という、改善のグッドサイクルを回し続けることが非常に大切です。

このグッドサイクルが、良い品質、良いライン、良い機械をつくるのです。

改善のグッドサイクルを回し続ける

ニンベンの付いた自働化の事例

では続いて、「自働化の事例」を確認していきましょう。

無人運転ラインの機械における、刃具折れ異常の検知

自働化の事例として有名なのが、無人運転ラインの機械における、刃具折れ異常の検知です。

これは、加工の毎サイクル毎に、機械が自動で刃具を確認し、もし刃具が折れている等の異常があったら、機械を停止させるものです。

自働化の事例 刃具折れ検知

ひもスイッチによる、自動車の組立ラインにおける異常の検知

こちらも自働化の例としてとても有名な、ひもスイッチによる、自動車の組立ラインにおける異常の検知です。

自動車の組立ラインでは、「ひもスイッチ」を引いて定位置でラインを止めます。
機械や治工具の異常時だけでなく、作業遅れが発生した時も自ら止めるためのものです。
ひもスイッチが引かれることで、管理監督者は、ラインで異常が起きていることを知ることができ、スピーディーな対応ができるようになります。

なお、異常が出たら止めるという考え方は、機械だけでなく、このような手作業工程にも適用されることを覚えておきましょう。

自働化の事例 ひもスイッチ

自働化の一例のポカヨケ

次に自働化の一例である、ポカヨケです。

ポカヨケとは、人が作業を間違ってしまった時にも、物理的にそれが気付けるような機構をラインや設備、品物に組み込むことをいいます。
例えばこの図のように、上下形状の違う部品の誤取付の防止にポカヨケを使います。

異常時は、部品が治具に入らないようにすることで、間違いに気付くことができる仕組みです。

自働化の事例 ポカヨケの事例①

ポカヨケの事例としては、このように、品物の部品形状を左右非対称形状にするものもあります。

組付ける部品を左右非対称にし、逆に組み付けようとしても、組み付け自体が出来ないような仕組みです。

この他にも、沢山の自働化の例が存在します。
「異常時に一目で分かる仕組み」をキーワードに、自職場でも色々な自働化を検討してみましょう。

自働化の事例 ポカヨケの事例①

ニンベンの付いた自働化の狙いや事例のまとめ

以上で学んだことをまとめてみましょう。

ニンベンの付いた自働化とは

  • ニンベンの付いた自働化は、人の働きを機械に置き換えること
  • 原価低減、品質のつくり込みのためには、ニンベンの付いた自働化を目指していかなければならない
  • 「人間を機械の番人にさせない」ために、異常が出たら止まる機構を機械に持たせることで、作業者や管理監督者の時間を、付加価値の高い他の仕事へ振り向けることが出来るようになる

ジャストインタイムとニンベンの付いた自働化の関係

  • ジャストインタイムで重視されるのは、スムーズな流れ。ジャストインタイムは、チームの力を向上させる
  • ニンベンの付いた自働化で重視されるのは、流れを止めること。自働化は、個々の力を向上させる
  • ジャストインタイムとニンベンの付いた自働化は関係性を持っている。自働化が疎かになりがちな会社も多くあるが、どちらも同じくらい重要であると認識することが大切

いかがでしたか?トヨタ生産方式の基本思想、2本柱(ジャストインタイム、ニンベンの付いた自働化)の概要はイメージできましたか?ジャストインタイム、ニンベンの付いた自働化に関する詳細については、下記のページで解説していますので、更に深く理解した場合は、こちらを参照してください!

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