品質とは?品質管理とは?品質優先の考え方や顧客の3つの要求を解説
品質とは?品質優先の考え方とは?
品質とは、お客様が要求している性質や性能のことです。お客様が満足する=品質が良いと言え、その品物の価値を表す「ものさし」になります。ものづくりの視点では、品物の状態だけでなく、機能/性能・コスト・納期を総合的に満足するものが良い品質となります。
本ページでは、品質とは何か、品質優先の考え方とは何か、そして顧客の3つの要求を踏まえた品質管理のポイントについて解説しています。
品質はなぜ大事?
1つの欠陥が企業の存続を左右する
もし、致命的な品質の欠陥があり、それが原因で製品の利用者が怪我をしたり、災害が発生してしまったら大変なことになりますよね。
たとえ1つの欠陥だったとしても、企業は社会からの信用を失ってしまう可能性があります。
影響が大きい場合、業績が急激に悪化し、従業員の雇用を維持できない恐れもあります。
そして、一度崩れた信用を取り戻すのは非常に困難だと言われています。
「たかが1つくらいの欠陥」という品質への甘い考えは、企業の存続を左右することにもなりかねないのです。
小さなミスと侮るなかれ・・・
では、怪我や災害に繋がる欠陥でなければよいのかというと、そうではありません。
小さな間違いや不備、ミスもなくしていくことが求められます。
例えば、小さな不備が1度だけ起きた場合、「次は気を付けてくださいね」という注意で終わるかもしれません。
しかし、同じ不備を2度犯してしまうと、「ちょっと、2度目ですよ」というように不快感を伴う注意を受けるかもしれません。
更に、同じ不備が3度目になると、「一体どういう管理をしているのか?」というような大目玉は確実です。
そして、4回目となると大激怒されてしまい、「いい加減にしろ!もう取引停止だ!」というように、
大事なお客様を失ってしまったり、悪い評判が広がりお客様が減少してしまうことも十分あり得るのです。
もちろん、4回目でも許してくれるお客様もいるかもしれません。
しかし、1回だけでも取引終了になってしまうこともあり得ることは覚えておかなければなりません。
品質とは企業の信用と信頼
品質は、企業に対する信用と信頼でもあります。
今働いている人は、良い品質の製品やサービスをお客様に届け続けることを通して、企業が過去に培った信用と信頼を守り、発展させていく義務があることを頭に入れておきましょう。
顧客満足と品質
お客様に利用・購入していただくには?
それでは次に、顧客満足と品質について確認していきたいと思います。
企業は利益を上げることが求めれますが、その利益を上げるにはどうすればよいでしょうか?
まずは、お客様に自社の製品やサービスを購入してもらう必要があります。
では、お客様に自社の製品やサービスを購入してもらうためには、どうすればよいでしょうか?
そのためには、お客様の要求を満たす品質を持つ製品を提供する必要があります。
品質の定義
一般的な品質の定義について確認してみます。
「品質とは、その製品やサービスが使用目的を満たしている程度(使用目的への適合性)」
何だかよく分かりませんよね。もう少し噛み砕いて言うと、「お客様から求められたものを納めた時、どのくらい満足してもらえたか?」が品質です。
これが1つ目の大事な視点です。お客様から見ると、「満足度」がまさに品質であると言えるのです。もう少し深堀りしてみましょう。
”品質が良い=満足度”が高いとは?
通常、ものづくりを行なっている企業では、自社で作った製品やサービスをお客様へ納品します。
この際、お客様が「品質が良い=満足度が高い」と感じてもらうためには、どういうものを納めればよいのでしょうか?
実はこの質問、一概に答えることができません。どういうことでしょうか?
お客様のニーズによって”品質の良さ”は変化する
例えば、お客様によっては、たとえ価格は高くても、「お客様が性能重視」であれば、“性能の良さ”が“品質の良さ”の一番の基準となります。
また、たとえ性能は低くても、「お客様が価格重視」であれば、“価格の低さ”が“品質の良さ”の一番の基準となります。
また、たとえ価格が高く、性能が低くても、「お客様が納期重視」であれば、“納期の短さ”が“品質の良さ”の一番の基準になる可能性が高くなります。これらは、言われてみれば、当然のことですよね。
そう、品質は、モノの性能・出来ばえだけで判断されるものではないのです。
お客様が何を求めているのか、それによって「品質」の基準は変化するのです。
そう、品質は、モノの性能・出来ばえだけで判断されるものではないのです。お客様が何を求めているのか、それによって「品質」の基準は変化するのです。
「品質が良い」という意味
例えば、10万円のブランドバックを購入した時、少しでも汚れが付いていたら、「品質が悪い!」と言ってカンカンに怒ってしまうかもしれません。
一方、100円の紙袋にも同じくらいの汚れが付いていても、「まぁいいか」という程度でしょう。
同じ汚れでも、受け取り方はまるで違うのです。
「品質」とは「価値」
つまり、品質とは顧客が支払う「対価」に対する「価値」のことでもあります。品質は相対的なものなのです。
一般に、品質は顧客が決定し、生産者は品質を決める事は出来ません。
「モノは良くないし、値段も高い」⇒こんな品質は問題外ですよね。
「モノは今一歩だけど、値段は安い」⇒これも今の時代、あまり受け入れられません。
「モノは良いんだけど、値段は高い」⇒これも同様に、今の時代、あまり受け入れられません。
「モノは良いし、値段も納得できる」⇒狙うべきはココですよね!
「モノは良いし、値段も格安」⇒これはどうなんでしょうか?実はこの考えには注意が必要です。
品質とコストの両立
当然ながら、企業である限りは、青天井に品質を高めていくことには限界があります。つまり、品質の2つ目の大事な視点は、「品質とコストの両立」を達成することなのです。
良い品質で低コストの製品を販売し、利益を出す。そして、出た利益を、更に良い品質・低コストの製品を造るために投入する。
このグッドサイクルが回り続けることを目指していくのが企業の本来の姿です。
いくらでもコストを掛けて高品質を求めることは、短期的にはお客様に認められることになるでしょう。
しかし、それにより利益が出ない体質になってしまうのであれば、継続的な品質の改善もままならなくなります。
長期的な時間軸でも品質のレベルアップを行なっていくためにも、お客様に納得して頂ける狙いの品質の製品やサービスを、コストと両立しながら作り上げていくことが必要不可欠なのです。
そして、それをどう達成するのかを管理するのが、「品質管理」の仕事ですよね!
ここまでをまとめると、
・品質の良し悪しは、自分たちで決められない
・お客様がどれくらい満足してくれたかで品質は決まる
・品質はコストも含めて考えなければいけない
・モノはいいけどコストが高い⇒品質が良いとは言えない
・お客様のニーズにマッチするモノを低コストで造らなければいけない
ということになり、これらを成り立たせる活動が、品質管理の活動であると覚えておきましょう!
品質優先の考え方とは
ものづくりにおいては、お客様のことを第一に考えた製品やサービスを提供していくことが必要不可欠です。ここからは、品質方針やマーケットインという用語も含めて、品質を優先する考え方について解説しています。
品質は誰が管理する?
まずは、品質優先の考え方について確認しましょう。
はじめに、みなさんに質問です。品質は、誰が管理するものでしょうか?当てはまると思うものを選んでください。
① 社長、工場長等の経営層の人
② 品質管理部門の人
③ 品質保証部門の人
④ 管理職等の役職が付いた人
自分なりの答えが出ましたか?
正解は、全て間違い、あるいは全て正解とも言えます。
つまり、品質管理というものは、特定の部門の社員が行なうのではなく、全社員が行なうものです。
従って、品質管理の基本的な考え方は、全社員が理解する必要があります。
品質管理を全社で推進していくには・・・
品質管理を全社で推進していくには、何が必要でしょうか。
まず第一歩として、関係者全員の考え方や方向性が「品質を優先する!」という価値観で一致していることが大切です。
品質優先とは、「短期的な利益追求よりも、良い品質の製品やサービスを提供することを優先する考え方」のことです。
コストダウン等ももちろん大事ですが、コストダウンによる利益だけを優先するのではなく、しっかりと良い品質の製品の提供を第一に考えることが大事です。そのことにより、結果的に顧客の信頼を獲得し、将来的な売上拡大や利益増加に繋がっていくことになるのです。
利益を上げるための活動は、肝心の品質がおろそかになっては実現できない
イメージ図で描くと、このような関係になります。
コストダウンやリードタイム短縮、在庫削減等の活動は、品質優先(品質第一、品質至上)という土台の上に成り立ちます。
利益を上げるための活動は、肝心の品質がおろそかになっては実現できないということをはっきりと認識しなければなりません。
そのためにも、この品質優先の価値観を組織全体で共有していく必要があります。つまり、行動規準としての品質方針が大切となるのです。
品質方針とは
品質優先の価値観を浸透させる!
それでは、品質方針について確認していきましょう。
品質方針とは、品質優先の価値観を浸透させるために必要不可欠なものです。
ISOでは、「トップマネジメントによって正式に表明された、品質に関する組織の全体的な意図及び方向付け」と定義されています。
この品質方針は、会社方針と整合を取りながら、製品やサービスの品質に対する組織の行動規準や方向性を経営トップ・幹部から正式に表明したものとなります。
品質方針を設定する際のポイント
品質方針を設定する際のポイントは、次の通りです。
- 組織の目的に対して適切であること。
- 要求事項へ適合していること
- 継続的な改善へのコミットメントを含むこと。
- 品質目標を設定し、レビューすること。
- 組織全体に伝達され、理解されること。
これらのポイントを踏まえ、ただ形だけの品質方針とならないようにしていかなければなりません。
また、品質方針を設定する際には、理想と現実のギャップを経営者がしっかりと認識し、理想論ではなく、達成可能なものにすることが大切です。あまりに理想論だけを掲げた品質方針となってしまい、それを見た社員が「またか」と思うことがないように、注意が必要です。
品質管理とは
品質管理とは、お客様の要求にあった品質を「経済的に」つくり出すための各種管理・改善のことです。QC(Quality Control)と略されます。
品質管理業務においては、業務・作業の調査・改善等まで踏み込み、良い品質をコントロールするために必要なあらゆることを行なうことが求められます。
品質管理の目的
日本がアメリカから「品質管理」を導入してから、長い年月が経ちました。アメリカから導入した品質管理は、日本で進化し続けています。
「統計的品質管理」
「QCサークル活動」
「QC7つ道具」
「新QC7つ道具」
「統計的方法」
等が生まれ、「TQC(全社的品質管理)」から、「TQM(総合的品質管理)」にまで発展しています。
品質管理は、どうしてもテクニック的な要素に焦点が当てられがちですが、分析手法・分析ツール等のテクニックの前に、しっかりと理解しておかなければならない大事な部分があります。
それは、「品質管理の目的」「品質管理の基本的な考え方」です。
「品質管理の基礎と基本」を疎かにしてしまった結果、品質管理活動に行き詰まってしまったり、あるいは全く成果が出なかったという事例が、実は後を立ちません。
品質管理は、あくまで自社の製品やサービスを購入して頂くお客様に「満足して頂くための手段」です。品質管理を行なうことが目的ではありません。
企業では、品質の良い製品やサービスをつくることで、お客様の信頼を獲得していくことが欠かせません。そしてそのためには、お客様の要望をしっかりと知ることが必要不可欠です。本ページで、品質管理が形だけの形骸的な活動にならないように、品質はお客様の要求とどう関係しているのか、どのような点に気をつけて品質管理を行えばよいかを確認していきましょう。
品質管理のポイント
品質管理とは、「ねらいの品質を安定的に実現していくための活動全体のこと」を言います。実務における具体的な活動としては、まずは、「お客様が求めている狙いの品質」に対して、「お客様へ納めている製品やサービスの現状」を、しっかりと現状調査を行ない、そのギャップを問題として認識します。
認識された問題に対して、課題を設定し、実行していきます。これを組織全体として継続的に行なっていくのです。
ポイントとしては、下記が挙げられます。
- 現状の姿とあるべき姿、ありたい姿をしっかりと把握すること
- 問題の原因や因果関係を解明すること
- 真の原因やプロセスに手を打つこと
全員参加で行なう品質管理活動
つまり、品質管理は、「困っている品質問題を職場として解決するための活動」ということになります。品質管理活動を進めていくにあたっては、従業員が個別に行なうのではいけません。しっかりと、組織に属する社員が全員参加で協力し合って問題解決を行なうことが大切です。
どんな業種においても、お客様の要求や期待を超える「魅力的」で「感動的」な製品やサービス提供していかなければなりません。そのために、各種の課題を明確化し、達成に向けた取組みを継続して行なっていくことが求められているのです。
お客様に満足頂く3つのポイント
ここまで説明した内容をまとめると、お客様に満足頂くためには、次の3つのことが必要であると言えます。
- 良い品質の製品やサービスの規格・基準を設定すること
- ばらつきの無い一定品質を保っている状態を維持管理すること
- ねらいの品質に対する問題を認識し課題解決のための活動を回し続けていること
これら3つのことを実現するために行なうのが、品質管理活動となります。
作業者1人1人、そして管理者、幹部、トップに至るまで、全ての関係者で協力し、お客様に満足して頂ける品質づくりを目指していくことが大切です。
顧客指向で行なう品質管理
品質管理では、マーケットイン(顧客指向)の考え方が大切
それでは次に、「顧客指向で行なう品質管理」について確認していきます。
製品やサービスを顧客に提供するにあたっては、企業側の視点を優先した考え方である、プロダクトアウトと、そして、顧客の視点を優先した考え方である、マーケットインという2つの考え方があります。
この2つの考え方のうち、品質管理では、マーケットイン(顧客指向)という考え方が非常に大切となります。
それぞれの言葉の意味について確認しましょう。
どちらが良い、どちらが悪いというものではないが・・・
マーケットインとは、「お客様ニーズを把握し、それを満たす製品やサービスを提供していくこと」を指します。お客様の満足度をいかに高められるかを重視する考え方です。つまり、「顧客が望む売れるモノだけを売る」という考え方で、顧客のニーズありきで商品開発を行ないます。
一方、プロダクトアウトとは、「会社の方針や作りたいもの・売りたいものを基準に商品開発を行うこと」を指します。プロダクトを作ってから、どのように販売していくかを考えるスタイルです。つまり、「良いものであれば売れる」という考え方で、自社の技術や強みを生かした商品展開を行ないます。
この2つの考え方は、どちらが良い、どちらが悪いというものでもありませんが、品質管理においては、特にマーケットインの考え方で製品を管理していくことが非常に大切です。
お客様の側に立ちマーケットインで考えよう!
製品やサービスを提供する側としては、次のことを考えたものづくりを行っていく必要があります。
- お客様が求める品質基準
- お客様が求める価格
- お客様が求める量・納期
- お客様にとっての生産性
- 地球環境の保全
- お客様を含む関係者全員の安全と健康
これらのことをしっかりと意識することが、お客様の側に立ちマーケットインで考えることになります。
既に世の中に出回った製品に対する品質管理は、マーケットインという考え方を強く意識して品質管理を行なっていくようにしましょう。
品質管理の歴史
品質管理は、元々はアメリカから日本に持ち込まれたものですが、今や日本は品質においては世界をリードする存在になりました。ここからは、どのような遷移をたどり日本の品質が世界のリーダーとなっていったのか、品質管理の歴史について確認していきましょう。
1940年代:アメリカの品質管理(Quality Control)が日本へ
◆1946年
ご存知の通り、日本は第二次世界大戦に敗戦しました。
敗戦後、連合国軍司令部(GHQ)は占領行政を行いますが、その際日本の通信施設での故障が頻発します。そこで、通信状況の改善が必要になります。
そこで呼ばれたのが、アメリカのウエスタン・エレクトリック社に勤める品質管理の技術者です。主に電気通信機器メーカーを対象に、品質管理の指導を推進していきました。
これが日本における品質管理の始まりと言われています。この時の品質管理の考え方は、電気通信機器メーカー以外の他業種にも拡大し、日本の製造現場に浸透していったのです。
◆1949年
工業標準化法が制定され、日本工業規格(JIS)が誕生します。
1950年代:日本でQCの導入と普及へ
1950年代になると、徐々に第二次世界大戦後の混乱も収束に向かいます。朝鮮戦争も勃発したことから、軍需関連商品の特需もあり日本経済が復興に向かっていきます。
しかし、旺盛な需要の反面、日本製の製品は、故障や不良品が多く、「安かろう悪かろう」と揶揄される時期でもありました。
当時は、購入する製品に問題が無いかを店先で店員が確認して顧客に販売する一般的で、今では考えられない状態でした。
◆1950年頃
この頃、アメリカのデミング博士(W.E.Deming)が何度か来日します。
そして、統計的品質管理(SQC:,tatistical Quality Control)の講演を行い、「管理図」や「抜き取り検査」等の統計的手法を丁寧に指導してくれます。
管理のサイクルであるPDCAの考え方の重要性も説いています。デミング博士は、現在では、「日本の品質管理の父」と呼ばれています。
◆1951年
日本科学技術連盟によって、品質管理のデミング賞が創設されます。ここから、品質管理が普及していく土台がを確立していきました。
※デミング賞についてはこちらから
◆1954年
アメリカのジュラン(J.MJuran)がQCとSQCを明確に区別したことにより、製造や検査の範囲に限定されていた品質管理の考え方を経営全体に拡大します。
◆1958年
渡米した日本のQCチームが、ファイゲンハウム博士(A.V.Feigenbaum)によって提唱された「全社的品質管理(TQC,Total Quality Control)」を持ち帰ります。
そして、QCサークルが誕生し、日本の品質が飛躍的に向上するきっかけとなります。
1960年代:日本的なQCが発展へ
この時代になると、貿易の自由化により、開放的な経済へ向かっていきます。品質管理の対象も広がっていき、SQCからTQCへと発展をしていきます。
◆1962年
日本科学技術連盟にQCサークル本部が設置され、QC活動の推進がスタートします。日本電電公社にQCサークルが誕生したのもこの時です。
◆1965年
日本電気が、アメリカのZD運動を導入し、日本に合う形に修正しました。
1970年代:日本式の品質管理が世界に注目
◆1978年
第二次石油危機を契機に、全社的品質管理(TQC)を加速させる企業が増加していきました。この時には、方針管理の重要性も高まったことで、TQCの大きな柱となります。
◆1979年
品質の高い日本の製品が世界的に注目を受け始めます。日本の品質管理だけでなく、ものづくりそのものに関心が寄せられました。
この年には、のハーバード大学のヴォーゲル教授が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という書籍を発売し、世界的名ベストセラーになりました。
この著書は、日本におけるものづくりの大きな変貌を分析し、アメリカにおいても改革を呼びかけるものだったと言われています。
1980年代:日本式が世界へ
TQCの強みが生かされたmade in JAPAN製品が世界をリードするようになります。この時の日本の国際競争力ランキングでは、1986年から1993年まで7年間1位に輝いています。
また、フィッシャーによって始められた実験計画法が、田口博士によって改良されます。これがタグチメソッドという名で、日本国内だけでなく、世界的に活用されるようになります。
◆1987年
品質システムの国際規格であるISO9000シリーズ(ISO:International Organization fot Standardization 国際標準化機構)が制定されます。
ISOは、品質システムを第三者の機関が審査する国際的に認められた品質システムで、国際間の取引をスムーズにする共通の基準がISO規格です。
1990年代:国際的な品質保証システムへ
◆1995年
製造物責任法(PL法)が制定され、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定められました。
これにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与するこがを目的とされています。
1960年代:日本的なQCが発展へ
そして、これからの時代です。今や品質管理はやって当たり前の時代です。どこまで高いレベルで実行できるかが重要となります。
これまで蓄積してきた日本の品質管理の功績を守り、そして発展させていく責任がこれからを創っていく我々にはあります。
決して衰退することなく、これからも日本の品質管理を発展させ、世界をリードしていく存在であり続けられるよう、ものづくりに関わる全ての人が日々考えて行動していかなければなりませんよね!
【参考文献】
・品質管理がわかる本 (著者:佃律志 日本能率協会マネジメントセンター)
・品質管理の仕事がわかる本 (著者:坂田慎一 同文館出版)
・品質管理の発展の歴史的経緯(著者:東條徹男)
・品質管理の歴史的展開-日本版TQMを中心に-(著者:鐘亜軍)
・図解よくわかるこれからの品質管理 (著者:山田正美 同文館出版)
顧客の3つの要求
それではここからは、品質管理を行う上で求められる「顧客の3つの要求」について、深堀りをしていきたいと思います。
顧客の品質要求
品質特性とは
品質とは、ある品物が使用目的に対して持っている特徴のことです。その特徴を明確にしたものを品質特性と呼びます。
例えば、鉛筆の品質特性には、書きやすさ、削りやすさ、芯の偏りの度合い、芯の折れにくさ、色の濃さ、重さ、長さ、デザインなどが挙げられます。
全てが良ければ良いというものではない・・・
品質管理にあたっては、お客様が要求する品質特性をよくつかみ、適切な品質特性の製品を生産することが重要となります。
全てが良ければ良いというものではありません。お客様の要望に合わせ、過剰品質にならないよう注意する必要があります。過剰品質はコストを上昇させ、結果的に顧客要求に応えられないことになります。鉛筆の書きやすさ、削りやすさ、芯の偏りの度合い、芯の折れにくさなども、お客様の要望に合わせて適切な水準とする必要があります。
また、人によって「良い」と感じるものは違います。鉛筆の色の濃さ、重さ、長さ、デザインなどはお客様によって何が良いかが変わるため、お客様の要望を詳しく知って合わせ込む必要があります。
代用特性とは
品質特性が測りにくい場合、その代わりに測定しやすい基準で良否を正確に判定できるようにする必要があります。これを代用特性といいます。
例えば、「良い」牛乳は何かという観点では「良さ」が測りにくいため、このような成分による代用特性で品質特性を測ることとなります。
顧客の価格要求
顧客のコスト要求は、工場に対する要求
次に、顧客の価格要求について確認していきましょう。工場では、顧客からの価格の要求に対し利益が出るように、常にコストを下げていく努力が必要となります。
この図のように「価格-利益=コスト」となります。
顧客のコストに対する要求は、工場に対する要求だと捉え、コストを下げていく努力を続けて行きましょう。
品質は損失という考え方
ちなみに、品質工学においては、品質は損失であると定義されています。品質とは、悪いモノやサービスを世の中に送り出した時、社会に与える損失のことであり、「品質」が悪ければ悪いほど、失ってしまう「お金」が増えると考える視点も大切となります。
品質問題が起きると後始末業務が発生する
品質が悪く、問題が起きると、多大な後始末業務が発生します。そして、準備・段取りの遅れ、改善の遅れ、人材育成の遅れに繋がります。
更に、ムリムラな生産調整、ギリギリの納期あわせが発生し、品質不具合やトラブル発生にまた繋がってしまい、利益を喪失し、モチベーションも低下させてしまうという負のスパイラルに陥ってしまうと覚えておきましょう。
顧客の納期要求
「何日の何時に」を納期ととらえる
納期とは顧客が製品を手に入れたい時期のことです。納期には、「何日の何時まで」という期限を示すものと、「何日の何時に」という時点を示すものがあります。
言われてみれば当たり前のことですが、この2つには明確な違いがあります。
ジャストインタイム生産では、モノが早く届きすぎてもいけません。そのため、「何日の何時に」という時点の考え方で納期をとらえることが必要となります。
納期を守るには?
生産には日数がかかります。そのため、納期を守るには、途中の工程に遅れが出始めたらその時に手を打って挽回することがポイントとなります。
納期はただ早ければよいというものではありません。「急げ、急げ」ではなく、顧客の求める納期に合わせて生産をコントロールすることが重要なのです。
顧客の3つの要求の関係
品質とコストに関するポイント
それでは次に、顧客の3つの要求の関係を確認していきましょう。品質、コスト、納期という総合的な品質の視点でポイントを整理していきます。
まず、品質とコストに関するポイントです。
顧客の品質要求を明確にすることや、顧客の価格要求に応えるために常にコストを下げていく努力を行うことが必要となります。繰り返しになりますが、必要以上の品質(過剰品質)はコストを上昇させ、結果的に顧客要求に応えられないことになるので注意しなければいけません。
そして、納期に関しては、途中の工程に遅れが出始めたらその時に手を打って挽回することが重要です。顧客要求を守るためにはどう生産をコントロールすればよいか見極めることも求められます。
「品質」「コスト」「納期」の優先順位
総合的な品質である品質、コスト、納期はどれも重要です。しかし、敢えて優先順位を付けるとすると、次の順番になります。
第1優先は、品質です。
品質は、何よりも最優先です。品質が落ちると、クレームにより信頼が低下し、注文がもらえないことにもなり得ます。また、手直し、やり直しにより、納期遅延やコストアップへも繋がってしまうことになります。
第2優先は、納期です。
現代では、納期は注文決定の重要要因の1つです。納期が長いと、注文をもらえません。また、納期に遅れても信頼が低下し、注文がもらえなくなってしまいます。
そして、コストです。
優先度は3番目とは言え、コストは利益に直結します。競争力へも直結します。コストが高いと、当然利益は出ません。そして、価格が高いと、お客様から注文をもらえません。
以上のことも踏まえ、企業においては、性能やスペックである「Q:品質」は、絶対に守らなければいけないものであり、お客様から要求された「D:納期」で、他社との優位性を持つ必要があることを意識し、お客様の期待に応えられる「C:コスト」を実現し、競争力を獲得していくようにしましょう!
なお、QCDの3要素を満足させるためにも、製品やサービスを造る人、そして使う人の「安全」が100%確実に確保されていることが大前提であることも忘れてはいけません。
品質管理のポイントまとめ
以上で学んだことをまとめてみましょう。
品質とは?品質管理とは?
- 品質とは、お客様が要求している性質や性能のこと。お客様が満足する=品質が良いと言え、その品物の価値を表す「ものさし」になる
- 品質管理とは、お客様の要求にあった品質を「経済的に」つくり出すための各種管理・改善のこと。QC(Quality Control)と略される
- 品質は、社員全員が、品質を優先するという意識を持つことが求められる
- 経営者から品質方針を全社員に落としこむことで、品質優先の価値観を組織全体で共有していくことが大切
- 品質優先とは、短期的な利益追求よりも、良い品質の製品やサービスを提供することを優先する考え方のこと
- マーケットインとは、お客様ニーズを把握し、それを満たす製品やサービスを提供していく考え方のこと
- 品質管理においては、いかにマーケットインで管理を行なうことが出来るか=いかにお客様のニーズを満たすことを考えて製品やサービスを提供していくかが非常に大切
顧客の3つの要求とは?
- Q、C、Dのうち、Q:品質を管理するにあたって重要なことは、お客様が要求する品質特性をよく掴み、適切な品質特性の製品を生産すること
- 品質工学では、品質が悪ければ悪いほど、失ってしまう「お金」が増えると考える
- 品質工学では、品質=損失と定義されている
- 2種類の納期の考え方とは何、「何日の何時まで」という期限を示すものと、「何日の何時に」という時点を示すもの
- 会社で働く個人に求められることは、良い製品や良い成果物をつくり出すために、質の良い作業・業務を行うこと
- 自社の製品を買ってもらうために必要なことは、お客様の要求を満たす品質をもつ製品を提供すること
- 顧客の3つの要求とは、Q:品質、P:価格、D:納期
- 顧客の3つの要求を満たすために、工場で管理するものは、Q:品質、C:コスト、D:納期
いかがでしたか?品質に対する基本的な考え方や、品質管理のポイントについて解説を行いました。
品質は、企業で働く1人1人が意識して守っていくものです。短期的な利益追求よりも、良い品質の製品やサービスを提供することを優先する考え方をベースとして、顧客の強い信頼を得られるような姿を目指していきましょう!
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