標準3票とは?工程別能力表、標準作業組み合わせ票、標準作業票について解説
標準3票とは?
標準3票とは、標準作業を構築する上で役に立つ、工程別能力表、標準作業組み合わせ票、標準作業票の3つのツールのことです。繰り返し作業における標準作業を見える化する際、この標準3票は活用頻度が高く、トヨタ生産方式における代表的なツールでもあります。
本ページでは、標準3票とは何か、どのように作成を行うのかについて解説していきたいと思います。
標準作業とは
まずは、標準作業についておさらいです。
標準作業とは、人の動き、モノ、設備の、最も効率の良い組合せを考え、良い品物を、より早く、安全に、ムダ無く造るための作業方法のことです。
モノの造り方のルールの明確化や改善のツールとして、標準作業は非常に重要な考え方になります。
標準作業には、「タクトタイム」「作業順序」「標準手持ち」の3要素と呼ばれるものがあります。詳細は下記のページで解説していますので、分からない方はチェックしておきましょう!
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標準作業のタイプと帳票
さて、標準3票を説明する前に、前提となる考え方を整理しておきたいと思います。
仕事には様々な種類のものがありますよね。繰り返しの作業や、定期的に行う作業、1回だけの作業など、工程の違い等により様々です。
そこで、標準作業は、3つのタイプに分けて考えていきます。ほとんどの作業は、次の3つのタイプのいずれかに該当するはずです。それぞれを確認してみましょう。
タイプⅠ
標準作業の3要素を用いて、繰り返し標準作業が組める工程がタイプⅠです。
タイプⅠは、タクトタイムが明確に設定される工程です。1個当たりの時間が明確に設定されており、「日当たり何個造る」というような扱いの製品が主な対象です。
こういった工程では、タクトタイム=サイクルタイムが理想となります。標準3票はこのタイプⅠで活用する帳票です。
タイプⅡ
タクトタイムは算出できるものの、組合せ種類が多く1人分の作業量を書き表しにくい工程がタイプⅡです。
タイプⅡは、タクトタイムを加重平均でも表すことができる工程です。タイプⅠと同様に、基本的には、タクトタイム=サイクルタイムが理想となります。
タイプⅡで使われる帳票には、作業手順書、標準作業組合せ票、山積表(工程編成ボード)、要素作業票が挙げられます。
タイプⅢ
非繰り返し作業を行なっている工程がタイプⅢです。
タイプⅢでは、総負荷量=定時となっているのが理想です。
タイプⅡで使われる帳票には、作業手順書、山積表(負荷表)、稼働分析表が挙げられます。
タイプⅠで活用する帳票である標準3票を確認!
ということで、そもそも標準作業には3つのタイプがありますが、その中で標準3票は、タイプⅠで活用する帳票であることを覚えておきましょう。つまり、どんな工程にでも使えるわけではなく、繰り返し作業において活用する帳票です。
それではここからは、標準3票(工程別能力表、標準作業組み合わせ票、標準作業票)について概要と作成方法を解説していきます。
工程別能力表とは?
工程別能力表は、機械別の生産能力の基礎になる(つまり機械別の標準工数を見える化する)情報ツールです。部品毎の工程の生産能力が把握でき、標準作業組合せ票を作成する時の基準になります。
工程別能力表では、手作業時間、機械の自動送り時間及び刃具交換時間等を記入し、工程の能力を算出していきます。機械・設備の生産能力を明確化することにより、ボトルネック工程を明らかにし、投資や改善の対象を決める際等の判断基準に用いることができるのです。
工程別能力表を作成する目的
次のことを目的として工程別能力表を作成します。
- 各工程の機械・設備の生産能力を明確にする
- ボトルネック工程を明らかにする
- ボトルネック工程に対し、作業時間の短縮、動作改善による生産能力の増強を検討する
標準作業組合せ票とは?
標準作業組合せ票は、タクトタイムを基準として、人の動きと機械の動きを組合せ、1人がどれだけの範囲を担当し、作業の順序をどのように行なうかを決めるツールです。
標準作業組合せ票では、標準作業を行なう「人」と「設備」の動きの組み合せを描きます。タクトタイムを基準とし、誰がどれだけの範囲を受け持ち、どのような手順で作業をするか決定することができます。
標準作業組合せ票を描くと、作業手順と作業時間の経過が容易に判断できるので、作業改善の切り口を見つけるために有効です。また、一定期間が経過した後も、この票と現状の作業の違いを容易に判断することができるのです。
標準作業組合せ票を作成する目的
次のことを目的として標準作業組合せ票を作成します。
- 作業順序と作業時間の経過が一目で容易に判断できる
- 作業改善の切り口を見つけるためにも大変有効なツール
- 教育訓練の際、標準作業組合せ票に対して、どこが不足しているか客観的に判断できる
標準作業票とは?
標準作業票は、作業者毎の作業範囲、標準作業の3要素 (タクトタイム、作業順序、標準手持ち)を図示したものです。
主に作業動線の問題点を見つけるツールです。品質確認、安全注意等の記号も記入していきます。
標準作業票では、工程内の設備の配置、作業者の動線を1枚のシートに描いていきます。作業範囲と標準作業の3要素、タクトタイム・作業順序・標準手持ちが記載されます。管理者が原則として作成し、現場に掲示することで、改善のツール・管理のツール・指導のツールとして活用できます。
工程別能力表の作成方法
それではここからは、工程別能力表の作成方法について確認していきたいと思います。
工程別能力表の基本フォーマット
このスライドに示すものが基本フォーマットです。各項目について確認していきましょう。
工程別能力表作成の手順
品番、型式、品名、個数を記入
- 品番、型式、品名、個数を記入します
- 改定があった場合は、改定に赤〇を付け、改定日を下に赤で記入します
例)2014年 4月1日
2015年12月3日
工程の順番、工程名称、機番を記入
- 工程の順番を記入します
- 工程名称(●●工程、〇〇加工機、◎◎測定機 etc.)を記入します
- 機番を記入します。機番が無い場合は記入不要です
手作業時間を記入
- 作業者が行なう手作業時間を測定して記入します(工程間の歩行時間は含まず書きます)
自動送り時間を記入
- 起動スイッチが入った瞬間から、自動送りが全て完了し、次のワークの手作業が出来るまでの時間を測定し記入します
完成時間を記入
- 部品を加工するために必要な時間を記入します(手作業時間+自動送り時間)
刃具交換等を記入
- 刃具交換や小物部品交換時間を測定して記入します
- 例えば、工順1の場合、刃具交換は100個に1回、1分5秒掛かるということになります
- 個当たり刃具交換時間は自動計算されるようにしておきましょう
加工能力を記入
- 各工程に対して、一番能力が小さい(数字が小さい)工程の数値を書きます
- この工程がボトルネック工程になります
- 加工能力は、下記の式で計算します
=定時480分×60秒/(完成時間+個当たり刃具交換時間)
※加工能力は自動計算されるようにしておきましょう
備考を記入
- 結果を可視化している部分です(ボトルネック工程が長くなります)
- 手作業は実線、自動送りは破線で描き、それぞれの線の上に数値を記入していきましょう
品質チェック等を記入
- 品質チェック等において、何回かに1回行なう場合は、その数字を記入します
- 例えば、5回に1回の場合は、品質チェック(1/5)となります
工程別能力表のテンプレートのダウンロード
以上が工程別能力表の作成方法になります。1から作成するのは少し大変なので、テンプレートを活用して作成することをお勧めします。
工程別能力表のテンプレートは、下記のページからダウンロードが可能です。是非ご活用ください!
標準作業組合せ票の作成方法
それではここからは、標準作業組合せ票の作成方法について確認していきたいと思います。
標準作業組合せ票の基本フォーマット
このスライドに示すものが基本フォーマットです。各項目について確認していきましょう。
標準作業組合せ票作成の手順
品番・品名、工程名、作成年月、改定日、所属を記入
- 品番・品名、工程名を記入します
- 作成年月、改定日、所属を記入します
直当たり必要数、タクトタイム、実行タクトタイムを記入
- 直(日)当たり必要数からタクトタイムを計算し、記入します
- タクトタイム=定時稼働時間/直当たり必要数
=8時間×3600秒/680個=42秒 - 実行タクトタイムは、実際の運用上の時間で、部品交換や刃具交換、可動率・残業時間等を考慮した時間を記入します
作業名、手作業時間、機械送り時間、歩行時間を記入
- 作業名と手作業時間、機械送り時間、歩行時間を記入します
- 現地現物でのストップウォッチ測定や動画撮影・分析を行ない、必ず実態を記入します
- その工程に対して初めて作成する場合、モデルとなる作業者はベテラン等、作業が習熟している人を選定することが大切です
線の描写
- 分析した手作業時間、機械送り時間、歩行時間から線を描写します
- サイクルタイム線、タクトタイム線を赤線で描写します
- タクトタイム線に対する手待ち時間は赤矢印を引き、一目で分かるようにします
T.T、実行T.T、C.Tの記入
- 上部にT.Tと書きます
- タクトタイムと実行タクトタイムが異なる場合は、実行T.Tと書きます
- サイクルタイムがタクトタイムをオーバーしている時は、サイクルタイム線も黒線で描きます
- 上部にサイクルタイムは黒でC.Tと書きます
付帯作業(非毎回作業)の記入
- 付帯作業(非毎回作業)も全ての作業をモレなく記入します
- 付帯作業(非毎回作業)は1個当たり時間をサイクルタイムの後ろに追加します
- サイクリックな作業だけでなく、非毎回作業時間も加えることで、現実的な標準作業か評価できます
表(おもて)化する
- カイゼン前には、標準作業組合せ票の「標」の字を黒の斜め2本斜線で消し、斜め左上に「表」と書きます
- カイゼンを行なう前に、実際の工程がありのままに表現された組合せ票のことを「おもて標準作業組合せ票」と呼びます
ちなみに、なぜ「表」にするのか分かりますか?
これは、現状作業のやり方を“表(オモテ)”にすることを意味しています。
カイゼン後の線の描写
- カイゼン前後で比較がしやすい様に、カイゼン前の線は上段、カイゼン後の線は下段に描きます
- 実際にカイゼンを行ない、表準とどこが変わったのかを赤で示します
- 「表」の下に赤で「標」と書きます(「表」は2本線で消しません)
- カイゼン後の組合せ票は、「木(き)標準作業組合せ票」と呼びます
カイゼン後の線の描写
- 標準作業組合せ票は基本的に1人の作業を描くものです。
- ただし、2人の作業を比較したい場合も多々あります。その場合は上下に並べて描き、ギャップを見えるようにしてもよいでしょう
標準作業組合せ票のテンプレートのダウンロード
以上が標準作業組合せ票の作成方法になります。1から作成するのは少し大変なので、テンプレートを活用して作成することをお勧めします。
標準作業組合せ票のテンプレートは、下記のページからダウンロードが可能です。是非ご活用ください!
標準作業票の作成方法
それではここからは、標準作業票の作成方法について確認していきたいと思います。
標準作業票の基本フォーマット
このスライドに示すものが基本フォーマットです。各項目について確認していきましょう。
- 1人単位で作業動線を描きます
- 非毎回作業は、標準作業票には記入しません
標準作業票作成の手順
作業内容、作成日、改定日を記入
- 作業内容を、「作業の始まりは左詰め」「作業の終わりは右詰」で記入します
- 作成日、改定日を書きます。後から状態がすぐに分かるように、確実に書きましょう
ボトルネックの表示、機番を記入
- ボトルネックの機械は斜線で塗り、手作業時間、自動送り時間を表記します
- ボトルネックは工程別能力表で確認しましょう
- 機械の機番を表記します
- 票の半分より上に描く機械は上側に、半分より下に描く機械は下側に書くようにしましょう
安全マーク、手持ちマークを記入
- 自動機には、緑安全のマークを表記します。手作業の機械には不要です
- 標準手持ちがある場所に、その数だけマークを表記します。例えば、2個の場合は、2個このマークを描きます
- この工程全体での総手持ち数を表記します。素材や完成品は含みません
品質チェック、タクトタイムとサイクルタイムを記入
- 品質チェックを行なう工程にこのマークを表記します
- 毎サイクルの場合は記号のみで構いませんが、何回かに1回の場合は、その回数を記入します(例:5回に1回⇒1/5)
- タクトタイムとサイクルタイムを記入します
- タクトタイムと実行タクトタイムが異なる場合は、実行タクトタイムを書き、上に「実行」と書き足します
歩行線、分解番号を記入
- 工程間の歩行は実線(矢印無し)で描きます
- 最初の工程への戻り歩行のみ、矢印破線で描くようにします
- ライン全体で何個の工程に分かれているか(何個の標準作業票が存在するか)を分解番号として表記します
- 分母はそのラインの工程数、分子は工程順番を書きます
表(おもて)化する
- カイゼンを行なう前には、標準作業票の「標」の字を黒の斜め2本斜線で消し、斜め左上に「表」と書きます
- 実際の工程がありのままに表現された作業票で「おもて標準作業票」と呼びます
カイゼン後の描写
- 実際にカイゼンを行ない、表準とどこが変わったのかを赤で示します
- 「表」の下に赤で「標」と書き(「表」は2本線で消さない)、「木(き)標準作業票」と呼びます
2名、3名の作業工程の場合
- 2名、3名の作業工程を同じ票に書きたい場合には、この様なフォーマットを活用します
- 書き方は基本フォーマットと同様です
標準作業票のテンプレートのダウンロード
以上が標準作業票の作成方法になります。1から作成するのは少し大変なので、テンプレートを活用して作成することをお勧めします。
標準作業票のテンプレートは、下記のページからダウンロードが可能です。是非ご活用ください!
標準3票まとめ
いかがでしたか?標準3票の概要と作成イメージは掴めましたか?
標準作業は、一度つくって終わりではありません。
①標準作業の決定
②標準作業の教育訓練
③標準作業の改善
これらのサイクルを継続的に回していくことが求められます。
標準作業の改善サイクルのポイント
①標準作業の決定においては、標準作業が無い場合は、ベテラン社員を基準に作成していくことがポイントです!
②標準作業の教育訓練においては、標準作業で全員が作業が出来ているか、定期的にチェックすることがポイントです!
③標準作業の改善においては、標準作業は1度決めたら終わりではないので、何度も何度も永遠に改善していくことがポイントです!
『標準のないところにカイゼンは無い』という有名な言葉があります。これは非常に的を得た言葉です。
何がどう悪いのか、どのくらい劣っているのか、それらは全て標準作業が基準になります。何となく良い/悪いという議論ではなく、「標準に対してこのくらい良い/悪い」という議論ができることが大切です。
そのためにも、生きた標準作業をつくることで、改善の土台をつくっていきましょう!
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