叱ると怒るの違いとは?褒め方と叱り方のポイントを解説
褒めると叱るの違い
一般に、怒るのではなく叱らなければいけない、褒めて育てた方が良いと言われます。しかし、ただ闇雲に褒めたり叱ったりするのでは全く意味がありません。
本ページでは、褒めること、叱ることに関するポイントについて解説しています。
褒めること、叱ることに関する5つのポイント
褒めること、叱ることに関する5つのポイントは次の通りです。
1つ目は、なぜ褒めることが重要なのか理解すること
2つ目は、褒めることが苦手な人はターゲットを明確にすること
3つ目は、叱ると怒るの違いを明確にすること
4つ目は、叱る時にやってはいけないこと
5つ目は、日々サインを届けること
それでは、それぞれのポイントについて詳細を確認していきましょう。
なぜ褒めることが重要なのか理解する
人間の行動原理のABCモデル
まずは1つ目の、なぜ褒めることが重要なのか理解することについてです。
行動分析学における、人間の行動原理のABCモデルを使い、褒めることの重要性を確認することが出来ます。
行動原理のABCモデルとは、先行条件A、行動B、結果Cを使い、どのような時に人間は行動するのかを説明したものです。
先行条件とは、「行動」の直前の環境のことで、目的やゴール、期限などがこれに当たります。
そして、Bは行動を表しています。体を動かす行動だけでなく、発言や振る舞いも含まれます。
Cは、結果を表しています。これは、行動をした直後に起きた環境の変化のことです。
人間は、Aの先行条件のためにBの行動をした時、Cの結果が望ましいものであれば、その人はまたA⇒B⇒Cを継続します。
一方、Cが望ましくないものであった場合は、人間はその行動が減ってしまう、あるいは全くやらなくなります。
従って、先行条件や行動そのものだけでなく、結果をいかにコントロールし、人間の行動の継続を促していくかが、マネジメントでは非常に重要な要素になるのです。
ちょっと背伸びしたら届く目標を
具体例を見てみましょう。
例えば、お腹が空いているので、美味しいものを食べて空腹を満たす、という先行条件Aがあったとしましょう。
この時の行動Bは、「食べる」ことです。
そして、結果Cでは、美味しかった場合と不味かった場合とで2つ考えられます。
もし、美味しかった場合は、その人はお腹が満たされるまで食べるという行動を続けることでしょう。
一方、不味かった場合は、食べるという行動はペースが落ちる、あるいは食べること自体をやめてしまうかもしれません。
これが人間の行動原理なのです。
会社のマネジメントでは、Aの先行条件だけをいじくれば、勝手に行動が変わって結果が付いてくると思っている管理者もたくさんいます。
しかし、いくら目標設定などの条件を変化させても、望ましい結果が全く出ない状態が続くと、部下は 行動すらやめてしまう可能性があります。
ABCモデルを知らずに、うまく行動を管理出来ていないケースが 多々発生しているのが実情です。
よく、「ちょっと背伸びしたら届く目標が最適」と言われますが、これは人間の行動原理に基づいたものなのです。
従って、行動原理のABCを的確に管理することは、とても重要な課題の1つとなります。
褒めることは結果を意図的に与える行為
では、本題である、なぜ褒めることが重要なのかということですが、
ビジネスの現場では、行動をしてもすぐに結果が出ないことが沢山あります。
先ほどのABCモデルにおける、結果 Cがすぐに与えられないことが多いのです。
従って、行動を継続させ強化させるためには、意図的に結果を与えることが必要になります。
つまり、部下の行動を継続させるためにも、褒めることにより結果を意図的に与えなければならないのです。
これが褒めることが重要である理由となります。
褒めることが苦手な人はターゲットを明確にする
自分が褒められた経験がないためわからない
では次に、「褒めることが苦手な人はどうすればよいのか」という悩みの克服の為の、褒めるターゲットの明確化について確認していきましょう。
褒めることが苦手、と感じている人は、特に40歳以上の方に多い傾向があります。
ある40歳以上の人を対象にしたアンケート調査結果によると、褒めるのが苦手と答えた人は、実に80%以上にも達することが明らかになっています。
「部下だった時に、上司から褒められたことがありますか?」というアンケート結果から、褒めるのが苦手な原因を紐解くことができます。
40歳以上の9割もの人は、自分が部下だった時に、褒められたことが無い と回答しています。
つまり、褒められることなく育った人は、自分が褒められた経験がないため、今自分が上司になり、どう褒めたらいいか分からないでいるのです。
褒めるターゲットを行動に絞る
このような、褒めることが苦手という方は、次のことを意識するとうまく褒めれるようになります。
それは、褒めるターゲットを行動に絞ることです。
よく、部下の気持ちが分からないから、分かる人間になろう、と言う人がいます。
しかし、極端な話、気持ちなんて分からなくてもいいのです。
気持ちを変に読もうとするから、うまく褒めることが出来なくなるのです。
そうではなく、その人の行動に焦点を当てて、やったことをきちんと認めて、しっかりと褒めること。
これが出来ていれば、必ず部下に伝わり、少しずつ部下の行動も変わってくるはずです。
行動に対して褒める、行動に対して叱る、行動を承認する、といったように、行動に焦点を絞ることは非常に重要なことです。
日々意識してマネジメントを行なうように心がけていきましょう。
叱ると怒るの違い
自分のためか、相手のためか
では次に、叱ると怒るの違いは何か明確にしていきます。
よく、叱るのはいいけれど、怒るのはダメだ、という発言を耳にすることが多いと思います。
では、叱ると 怒るは どういう違いがあるか、あなたは説明できますか?
1分で考えて、ノートに記載しましょう。
では、回答例です。
叱ると怒るの違いを うまく表現している言葉があります。
それは、自分のために怒る、そして、相手のために叱るという言葉です。
もう少し詳しく見てみましょう。
誰のためなのか
怒るという行為は、相手が自分に悪影響を与えたり、自分が指示したとおりに動いてくれなかったとき、自分が腹をたてたことを相手にぶつける行為のことです。
この「自分が腹を立てたこと」 という視点がポイントです。一方、叱るというのは、相手が誰かに悪影響を与えたり、自分が指示したとおりに動いてくれなかったとき、相手をより良くしようとする注意やアドバイスを、あえて語気を強め相手に伝える行為のことです。
「相手をより良くしよう」 という視点がポイントです。つまり、叱ると怒るの最大の違いは視点です。自分のためなのか、相手のためなのかという視点は、大きな違いですね。
やさしい口調で話せばいいと思っている人もいますが、口調の問題ではなく、誰のためにかが重要なのです。
叱る時にやってはいけないこと
人格や性格を叱ってはダメ
では、叱ると怒るの違いが明確になったところで、今度は叱る時にやってはいけないことについて説明していきます。
叱ることは必要なことですが、やってはいけないことがあります。
それは、相手自身の人格や性格を叱ってはダメということです。
例えば、次のようなことを言われたらどうでしょうか。
君は考え方が間違っているから出来ないんだ。
君はだらしがないから成績が悪いんだ。
普通は誰でも出来るのに一体どういう教育をしてきたんだ。
これらのようなことを言われても、言われた人からしてみると、自分がいったい何を直せばいいか よく分かりません。
あくまで 叱るときには、「望ましい行動ができるように叱る」 ということを意識するようにしましょう。
例えば、ただ「なぜ遅刻するんだ!」と言うだけでなく、「遅刻をしないように、必ず15分前に会社に着くようにしなさい。」といったように、望ましい姿を示してあげましょう。
そして、それに加え、望ましい行動が継続できるようにサポートをしましょう。
例えば、「冬は路面状態が悪いから、10分早く家を出る様にしたらよいのではないか。」というように、気づきを促す言葉を掛けてあげると、なおよいでしょう。
日々サインを届ける
どちらも重要ですが・・・
では最後に、日々サインを届けることについて確認します。
褒める、叱る時、次のうちどちらが重要でしょうか。
1つ目は、何と言って褒めるか、叱るか。
2つ目は、誰が褒めるか、叱るか。
5秒間考えてみましょう。
実はどちらも重要なのですが、より重要なのは、誰が褒めるか、叱るかです。
人間の感情として、尊敬できない上司や先輩、あるいは嫌いな上司や先輩からは、何を言われても聞き入れてもらえないのが普通です。
あなたも部下だった時代に経験があるのではないでしょうか。
例えば・・・
例えば、いつも あーでもない こーでもないと 怒っている上司や、いつも自分を見向きもしない上司がいたとしましょう。
こういう人が 褒めたり叱ったりすると、どうなるでしょうか。恐らく、たとえ褒めたとしても、「何かいいことがあったんじゃないの?」と陰で言われてしまうかもしれません。
あるいは、きっちりと叱ったと思っていても、「また 怒ってるよ。」と言われているかもしれません。さらに、いつも自分へ関心がないと思っているのに 急に話かけられたので、「急にどうしたの、気持ちが悪い。」と思われてしまったり、
「え?もしかして 私に気があるの?」と思われてしまうかもしれませんよね。
日常の部下に対する姿勢や意識が大事
そう、大事なことは、私はあなたの行動をちゃんと認めているよ、というサインを日々しっかり届けることです。
講義を受けた後だけ、急に褒めたり叱ったりして、しばらくすると また元に戻ってしまうようなやり方をしていると、決して部下へサインは届きません。自分の行動を、いつも しっかりと見てくれていると 感じてもらうこと。
そして、自分の正しい行動を、いつも しっかりと認めてくれていると 感じてもらうこと。
これを日々意識しながら職場のマネジメントをしていかなければならないのです。つまり、一番大事なことは、日常における部下に対する姿勢や意識です。
決して、形だけであったり、嫌々褒めたり叱ったりしてはいけません。
部下と本気で向き合うことを大切にしていきましょう。
褒め方と叱り方のポイントまとめ
以上で学んだことをまとめてみましょう。
褒めるとは?叱るとは?
- 褒めることが苦手な人は、褒めるターゲットを“行動”に絞ることが有効
- 無理に気持ちを理解しようとはせず、行動に焦点をあてて、やったことをきちんと認め、しっかり褒めることが大切
- 怒ると叱るの違いは、自分のために怒る、相手のために叱るというように「視点の違い」がある
- 自分が腹を立てたことを部下に怒るのではなく、部下をより良くするために叱ることを意識することが大切
- 自分の行動をいつも「しっかりと見て、認めてくれている」と感じてもらうことで、部下が指示を素直に聞き入れてくれるようになる
- 普段、自分のことを見向きもしない上司に対しては、心の壁が大きくなり、素直に聞いてもらえることはない
- よって、日々「私はあなたの行動をちゃんと認めているよ。」というサインをしっかり届けることが大事
いかがでしたか?褒め方と叱り方のポイントは理解できましたか?
行動に焦点を当てるということを忘れずに、正しく褒めたり叱ったりできる上司・リーダーになりたいですね!
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