カイゼンベース / KAIZEN BASE

LMS活用による製造業の教育DXの進め方

藤澤 俊明

藤澤 俊明

代表取締役
シニアコンサルタント

トヨタ自動車の生産技術部門を経験後、製造系大手コンサルティングファームを経て2015年にカイゼンベース株式会社を設立。国内外の製造業を中心とした人材育成・改善支援に尽力中。

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製造業における教育DX化の必要性

いま注目を集めている「人材教育のDX化(教育DX化)」の取り組みは進んでいらっしゃいますか?
必要な人に、必要な分野の質の高い教育を、必要なタイミングで、低コストで実施する。
このコラムを読んで、貴社の成長の核となる「LMSを活用した教育DX化」に、是非取り組んでみませんか?

教育DXとは?

まずは、製造業における教育DX化の必要性について確認していきます。

DX,Digital Transformationは、あらゆる業種において非常に重要なキーワードになっています。製造業においても様々なDXが推進されており、業務変革のニーズの高まりに伴い、各社で取り組みが加速しています。

製造業において、DXとは「ものづくりの現場でこれまで培ってきたノウハウを個人の経験値として蓄積していくだけでなく、デジタル化により共有しやすくする」ことを指します。
デジタルデータを「生産性向上」「品質向上」「リードタイム短縮」「人材育成」に活かし、日々変動する顧客や社会のニーズに合わせてビジネスモデルに変革をもたらすことが非常に重要となっているのです。

経済産業省「DX推進指標」とガイダンス

経済産業省からも2019年7月に「DX推進指標」とそのガイダンスが発表されています。
そこでは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されており、国を挙げてDXの推進が叫ばれています。

人出不足、コロナ禍、原材料高騰などの社会的背景も後押しとなり、製造業におけるDX推進の重要性は日に日に高まりを見せていると言ってよいでしょう。

教育DXとは?

製造業で推進されているDXの種類

さて、DXと一言で言っても、様々なものが存在します。

開発・設計プロセスDXには、設計・製造データを同期させて検討するバーチャル・エンジニアリング等が該当します。設計担当者個人にノウハウが蓄積するのではなく、会社としてノウハウを蓄積するために、積極的なデジタルデータの蓄積と活用が重要となります。

製造プロセスDXには、製造現場の見える化(IoTデータ活用)、日報データ化・見える化、機械・システムの自動制御等が該当します。IoTデータ活用は製造系のコンサルティング会社を初めとして、システム開発会社も参入し、激しい競争が繰り広げられていることは既にご存知のことですね。

サービスプロセスDXには、提供設備の保全データを活用したメンテナンスサービス等が該当します。モノを売って終わりではなく、販売した後にも精度の高く、かつ効率的なメンテンナンスサービスを行うことが重視されているのです。

意外と忘れがちな人材教育DX

さて、もう1つ意外と忘れがちなDXがあります。それは、人材教育DX(以下、教育DXと呼びます)です。

各種DXを推進していく際、本当に実のある製造DXへ結び付けていくためには、プロセスをカイゼン・改革できる人材が必須です。
既存のプロセスをただデジタルに置き換えることは非効率なプロセスをDX化することにもなります。より無駄のないプロセスに変えて標準化が出来るスキル・マインドを持った人材を短期間で育成していくことが不可欠な時代となっています。

そのために、教育にもDX化を推進していく必要があるのです。

製造業で推進されているDXの種類)

製造業における教育DXの現実

製造現場のプロセス変革のためには、ITシステムへの投資によるDX化だけでは片手落ちと言わざるを得ません。生産活動に携わる人材の教育もDX化により推進速度を加速させていくことが欠かせないのです。

従来型の教育の問題点

従来型の教育は、外部講師による集合教育、社内講師による集合教育・個別教育、外部研修への出張受講等が主たるものでした。

この従来型の教育の問題点は次の通りです。

  • 全員が集合する時間が取れない(ただでさえ人手が足りない・・・)
  • 熱意のある講師人材に依存した体制(この人がいなくなったら・・・)
  • コストの都合で特定の分野にしか対応できない(もっと幅広くやりたいのだけど・・・)
  • 全体設計ができていないため、点の教育に留まっている(1回きりで続かない・・・)

人材教育は継続的に行うことが最も大切な視点です。思いつきで教育を行ったり、手あたり次第教育を行うことは非効率的であると言わざるを得ないのです。

企業における人材教育の基本は、「必要な時に」「必要な人へ」「必要な教育を」行える仕組みを構築することです。
この基本に立ち戻って、どのように企業における教育を進めていくかを考えていくことが大切です。

製造業における教育DXの現実

どうする人材教育?どうする教育DX?

どうする人材教育

あなたの会社では、教育DXをどのように進めていきますか?
その戦略と戦術は明確になっているでしょうか?

製造業における教育DX化の定義と具体策

製造業における教育DX化の定義

ではここからは、製造業における教育DX化の定義と具体策について確認しましょう。

ここからは、製造業において、どのように教育DX化を進めていけば良いか、その方向性を解説していきたいと思います。

弊社では、教育DXを次のように定義しています。

“デジタルツール・デジタルコンテンツをフル活用し、
必要な人に、必要な分野の質の高い教育を、必要なタイミングで、
そして低コストで実施することにより、
自社の成長の核となる人材を継続的に増やしていく取り組みのこと“

製造業における教育DX化の定義と具体策

では、この定義に沿って、進め方の具体策を見ていきましょう。

デジタルコンテンツとは?

まず、「デジタルコンテンツ」というキーワードについて確認しておきましょう。

デジタルコンテンツとは、PowerPointの教育資料、Excelのテスト・アンケート・進捗管理表等、教育に関する各種ツールにおいて、これまで手動で管理しているものを“システム上”で扱えるようになっているもののことを指します。

PowerPointもExcelもデジタルデータではありますが、これらを教育担当者のパソコンやサーバーの中で管理している状態(デジタルデータのアナログ管理!)から、システム上で管理されている状態を目指します。

デジタルコンテンツとは?

教育担当者が辞めたり異動になった瞬間にデータの場所が分からなくなるような状態になっていませんか?
熱意のある教育担当者が孤軍奮闘しているから成り立っている状態になっていませんか?
そうではなく、誰でも同じように、そして継続的に運用管理ができる状態になっていることが求められるのです。

低コストで人材教育を運営するには?

それでは次に、低コストで人材教育を運営するための方法について確認していきましょう。

低コストで人材教育を運営するための方法

人材教育の“質”と“掛ける費用・工数”

人材教育の“質”と“掛ける費用・工数”の2軸で考えてみましょう。

1つ目は、お金も時間も最小限。でも効果も最小限。
⇒これは教育に力を入れているとは言い難い状態ですね。

2つ目は、たくさんお金と時間を掛けたものの効果がイマイチ。
⇒これは経営側と教育部門の独りよがりになっている可能がある状態です。

3つ目は、たくさんお金と時間を掛けて質の高い教育を実施する。
⇒これは教育に力を入れていることは評価されるべきですが、掛かる費用や工数が大きいため、永続的に継続できるか分からない状態です。

そして4つ目は、お金と時間を最小限に抑え質の高い教育を実施する。
⇒教育DXで求めるのはこの状態です。あくまで教育DXで目指すはこの状態でなければならないのです。

低コストで人材教育を運営するには?

教育DXで目指す姿

教育DXで目指す姿は、質の高い教育を低コストで実現することです。たくさんのお金を掛けて実現することではないと捉えることが大切です。
あくまで質を上げながらコストを抑えるのがDX。このことを大前提として押さえておきましょう。

教育DX化を行うと削減できるコストのイメージ

例えば、300名規模の会社の場合の教育DX化による教育コストの変化イメージを想定してみましょう。

従来型の教育方法の場合には、1分野の教育を例えば30人に対して行おうとした場合、外部研修であれば5万円×30人=150万円ほど掛かります。もちろん複数分野で実施する場合には費用は倍・倍で増加します。

それに加えて、社内講師がいくつかの分野で教育を実施する場合、1人では工数的に対応が難しいため、2~3人で対応が必要になります。仮に専属で3名が教育担当として従事した場合、600万円×3人=1800万円ほどの人件費が発生してしまいます。外部支払いだけではなく、社内人件費も含めて考えると、決して安い額ではありませんよね。

教育DXでは、これを1/3に圧縮することを目指します。
eラーニングなどを活用して外部支払いを削減します。eラーニングの場合、同時に複数分野を実施しても倍・倍で増えることはありません。
そして、社内教育担当者は、工数削減により1人で対応ができるような運営方法に変えていくのです。

低コストで人材教育を運営するには?

なぜ、教育担当者の工数が掛かってしまうのか?

では、なぜ教育担当者の工数が掛かってしまうのかを深堀りしてみましょう。一般に、次のようなことが挙げられます。

  • 各自教育記録が紙でファイリングされていて、更新に手間が掛かる
  • 教育後の記録記入漏れが度々ある
  • どこに記録したのか分からなくなる
  • 出向先から帰任すると自分の教育記録が紛失している
  • 上司の変更、異動などの期に記録を取らなくなる
  • 教育内容、キャリアラダーの最新版管理ができない
  • 全部署の管理者、受講者への周知が困難 etc.

これらの工数問題は、キャリアラダー、教材、教育記録、アンケート、実践課題、レポート、評価等をすべてLMS内で一括管理していくことが解決につながります。

LMS(Learning Management System)を活用すれば、データの一元管理により継続的運用の手助けとなり、従業員への教育や研修のより効果化が可能です。従業員の人材育成による企業の成長に欠かせないツールがLMSなのです。

なぜ、教育担当者の工数が掛かってしまうのか?

LMS(Learning Management System)をフル活用する!

LMSを活用すれば、学習動画等の高い品質のデジタルコンテンツを多くの人材に効率的に活用できます。

教育記録、実践課題レポート提出・評価、アンケート等、履歴をデジタルで管理することが可能です。キャリアラダー(人材教育体系)の設定や更新もカンタンに行うことができます。

運用方法が明確になっていれば、担当者が変わっても継続して運用が可能であることも大きなメリットになります。

デジタルデータをアナログで管理する文化から、全てデジタルで管理する文化への変革ためにLMSの活用を検討していきましょう!

LMS(Learning Management System)をフル活用する!

実践訓練に重点を置くカリキュラムで教育の質を上げる

それでは次に、質の高い教育を実施する方法について確認していきましょう。

質の高い教育を実施する方法

一番大事なことは、知識の詰込み型にせず、実践訓練に重点を置くカリキュラムにすることです。
ラーニングピラミッド(次項参照)の考え方を考慮すると、eラーニングでの学習は、あくまで20%程度の学習定着率でしかありません。

75%以上の学習定着率を目指すためには、「自ら能動的にアウトプットする」カリキュラムを設定することが欠かせないのです。

ポイントとなるのが、「ワークショップ・ケーススタディ」「実践課題」の織り込みです。

「実践訓練に重点を置くカリキュラム

学習定着率の基本 ~ラーニングピラミッド~

では、ラーニングピラミッドについて確認していきます。

ラーニングピラミッドは、学習方法と学習の定着度(≒学習効果)を効果の小さいものから大きいものへ順番にピラミッド状にまとめた経験則です。
あくまで経験則であるため、科学的な根拠があるわけではありませんが、納得度の高い考え方だとして広く用いられています。近年ではアクティブラーニングという名のもとに、学校教育などでもこの考え方が考慮されているのをご存知の方も多いかもしれません。

学習定着率の基本 ~ラーニングピラミッド~

ラーニングピラミッドによると、講義による教育は学習定着度が5%ほどしかないと言われています。Eラーニングは少し上がりますが、それでも20%程度です。
画像の上半分は、受動的(受け身)の学習方法であるため、学習定着度が低く設定されています。

学習定着度を上げるためには、能動的(自ら進んで発信)な学習方法を採用することが必要です。
例えば、ワークショップやケーススタディを行うことにより、自らの頭で考え、自らの口で発言する場を設定することで、学習定着度50%ほどまで一気に向上します。

更に、実践課題に取り組むことにより、更に学習定着度は向上します。
与えられた課題に対して、実際の自分の職場に当てはめて実践を行うことで、実務で使えるスキルが定着するのです。
実践課題まで行うことで、75%の学習定着率であるという認識が大切となります。

まとめると、

  • eラーニングで知識をインプットし、
  • 実践課題で知識をアウトプットすることで学習を定着させる。
  • 必要に応じて、ワークショップ、ケーススタディで段階を踏みアウトプットの質を上げる手助けをする。

という進め方を考慮することで、質の高い教育を行うことが可能となるのです。

※ラーニングピラミッドの詳細については、別記事にて詳しく解説を行いたいと思います。

会社の成長の核となる人材を増やしていく

それでは最後に、継続的に教育を行い会社の成長の核となる人材を増やしていく方法について確認していきましょう。

会社の成長の核となる人材を増やしていく方法

本来、人材教育は中長期に渡って、1歩1歩進めていくものです。
短期間で一気に知識を詰め込もうとすると、教育の効果を上げることはできません。

  • 必要な人に、
  • 必要な分野の教育を
  • 必要なタイミングで
  • 無理なく実施する

そのために、会社はそのためのツールと環境を準備・提供し、階段を上がるサポートを継続することが欠かせません。例えば、組織の年間目標にも落とし込み(本年は係長クラス〇名認定等)、継続的に管理を行うのです。

社員は、自分に求められているものを明確に、焦らず毎年1歩1歩上がっていけば良い状態をつくりましょう。そして、入社から上位職になるまで、「1歩ずつ丁寧に成長の核となる人材を育てる」という姿勢が企業には求められるのです。

そのためにも、人材教育体系図(キャリアラダー)が存在しない企業では、その構築と運用を行っていきましょう。

情報の整理

人材教育体系図(キャリアラダー)に関しては、こちらの記事で詳細を解説しています。

製造業における人材教育体系の作り方

以上となります。弊社では製造業の教育DX化の進め方に関する無料セミナーを定期的に開催しています。
本記事よりも更に具体的な進め方等を解説しています。各回参加者限定のセミナーとなりますので、ご興味のある方は是非ご参加ください!

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使用用途 社内教育や発表資料作成における作業効率化等
ファイル形式 PDF
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